ネットで小説を書いている人間が駄文を連ねる場所。

2017/06123456789101112131415161718192021222324252627282930312017/08

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
水月五月雨さんの「なろうクロスオーバー」に、一応ウチからも二人キャラを応募しておりまして。
送ったときに、なんとなくノリで書いてみた文章があったので、せっかくなので掲載しておきます。

タッグ戦なら、やっぱりコイツらだろー






 午後の陽気をのんびりと浴びながら、二人の少年が住宅街を歩いている。
 一人は、学生服を着た、背の高い男だった。
 190cmを越える長身ではあるが、肩幅がいやに狭く、さほどの威圧感はない。寝癖を整えただけの適当な黒髪に、銀縁眼鏡も相俟って、地味な印象がぬぐえない。唯一、目を引くところがあるとすれば、腰に布でくるんだ棒を結わえていることだろうか。
 そしてもう一人の男。目尻が少し垂れ気味だが、中々の男前である。
 ただし、その格好は少々特異で、チノパンにカットソーというところまでは良いのだが、何故かその上に花柄のエプロンをつけており、掃除の途中だったのか、ハタキを手に持っていた。
 エプロン男は大きく溜息をついて、隣の男を見上げる。
「お前なあ。急に帰ってきて、大事な用事って言ったから着いてきたけど……なんなんだ、こりゃ」
 非難するようにハタキで学ラン男の脇腹を小突く。学ラン男は「ふむ」と頷いて、にやりと口角を上げた。
「聞いての通り、天下一バトルロイヤルだ」
「そりゃさっき聞いたからわかってる。問題は、どうしてそれにお前が参加して、しかも俺が相棒になってんだよ?」
 エプロン男がハタキで学ラン男の頭をパサパサとはらう。学ラン男はそれを軽くいなして、大仰に溜息をついた。
「わからんヤツだな。優勝すれば、何でも願い事が叶うらしいじゃないか。実は、もうすぐエリシアの誕生日でな。何か欲しいモノがあるかと聞いたら、絶対にサビず、焦げ付かず、軽くて大きな炒め鍋が欲しいという。そんな代物、探しても見つからないだろう」
「……で、その鍋を手に入れるために、インチキ臭え大会に出場したのか。俺を巻き込んで」
「君もメイドなのだから興味があるだろう。サビず、焦げ付かず、軽くて大きな炒め鍋は」
「……や、そりゃまあ……あれば便利だけどよ」
「異世界があるのだから、インチキ臭い大会があっても不思議じゃない。折角なので欲張って、炒め鍋から圧縮鍋まで、各種揃えたセットを二つ注文するつもりだ。勝てば、君にも一生使える鍋セットだ」
「お、一生モノか。家計を預かる人間には魅力的な言葉じゃねえか」
 エプロン男は急に目を輝かせて、至高の鍋に思いを馳せた。どうせなら熱しやすく冷めにくいモノにしてもらおう、などと注文を増やす始末である。
 安い男だなと学ラン男が呟いたときである。不意に、三叉路の影から、人影が躍り出た。手に持った長い棒が、二人にめがけて打ち下ろされる。
「ふむ」
「うおっ!?」
 咄嗟に、それぞれの獲物――学ラン男は腰に結った棒状のモノ。エプロン男はハタキで棒を受け止め、同時に後ろに跳んで距離を取る。
「……やれやれ。奇襲とは卑怯だな。名乗りを上げる暇ぐらい与えてくれても良いだろうに」
 学ラン男が、手にした獲物の布を取り払う。
「や、奇襲は有効な手段で、戦闘に卑怯もクソもねえって、お前が言ってたぞ」
 エプロン男も手にした獲物を――これ以上どうしようも無かったので、とりあえず持ち直した。
 奇襲に失敗したと見て、人影が棒。否、氷で作られた槍を構え直す。真っ向勝負というわけだろう。
「やれやれ。戦いには両者の合意が必要と聞いたが……まあいい。折角の仕切り直しだ。名乗りを上げさせて頂こう」
 学ラン男は手にした武器。黒い鞘に仕舞われた、一振りの日本刀を引き抜いて不敵な笑みを浮かべた。
 美しい木目模様の刀身は妖しく光る。その美しさに、奇襲者が一歩退いた。学ラン男は意気揚々と刀――ダマスカス鋼製の日本刀。無銘桜花を構えてこう呟いた。
「千の言葉に万の罠。黒衣のサムライ、高木聖人(たかぎまさと)」
 それに続くように、エプロン男もにいっと笑い、ハタキをビシっと奇襲者に向ける。
「誓った忠義に嘘はねえ。けれど御主人様は中学生。鈴ノ宮家メイド筆頭、仁科恵一(にしなけいいち)!」
 いざ、至高の鍋を求め、参る。


 なんだこいつら。それが、奇襲を仕掛けた男――不動マコトの感想だった。
 サムライだの、メイドだのと名乗っているが、どう見ても背の高い高校生と、エプロンを着た高校生である。
 マコトが大会に参加したのは、自身の恋人であり、相棒である六花(りっか)のため。六花はマコトが雪山で遭難した折に助けてくれた、おかっぱ頭の愛らしい、妖怪雪娘である。
 雪娘のくせに温泉が大好きで、雪山で暮らしていた頃には、自分で掘り当てた温泉に毎日浸かっていたのだが、連れて帰ってからはしがない貧乏暮らしが祟り、ワンルームマンションのユニットバスでシャワーを浴びる生活。二人で生活をするにはワンルームも狭く、折角だから庭付き温泉付きの一軒家でもお願いしようと思っての参加だった。
 ごくごく普通の大学生マコトは、何やら超人クサイ連中と張り合うことなどできない。だからこそ、雪娘唯一の特殊能力、口から吹雪を吐くというもので、氷の槍を作ってもらい、武器にしていた。どうやら超密度の氷を精製することができるらしく、ぽっきり折れてしまいそうな槍であるが、切れ味は鋭く、折れることもなく、溶けもしない。不純物無しの氷は、無色透明であり、敵も視認しづらい。相手も日本刀を持ち出したので油断はならないが、もう一人はハタキである。勝機は十二分にあった。
 相手も武器を構えたのだから、戦いは両者の合意であるだろう。奇襲はあくまでも、自分を印象づけるため。あれで倒すつもりはなかった。
「さあ、行くぞ」
 マコトは槍を構え、日本刀を持った男――高木に突撃した。
「待った!」
 いざ、と槍を繰り出そうとした瞬間、不意に高木がマコトに手を突き出し、制止した。不意のことで思わず素直に立ち止まってしまったマコトだったが、高木はその隙を突くでもなく、顎に手をやり、何やら思案していた。
「少し気になったのだが、仁科。君は鈴ノ宮家メイド筆頭なのか?」
「は?」
 高木が口にした言葉に、マコトは思わずぽかんと口を開いた。確かによくわからない名乗りだったが、ちっとも重要なことではないように見える。
「や、なんか良い名乗りを思いつかなくてよ。お前が黒衣のサムライとか名乗るから、単にメイドだけってのも、なんか短すぎるだろ?」
 恵一が普通に反論する。マコトとしては、いざ勝負とばかりに踏み込んだので、一人だけテンションが上がった状態であった。妙に落ち着いた会話についていけない。
「百歩譲って、鈴ノ宮家に仕えるメイドというのは認めるが、筆頭はおかしいだろう。そもそも、メイドは君一人しかいないのだし、筆頭も末席も無い。ちょっと言い直してみたらどうだ?」
「一人なら別に筆頭でもいいじゃねえか。俺より上がいねえんだし」
「それならば、わざわざ筆頭と強調するのは語弊を招く」
「それならお前だって、何が黒衣のサムライだよ。かっこつけてんじゃねえよ!」
「僕だってもう少し謙虚な二つ名にしたかったのだが、フィアが『そんな弱そうなのは嫌』というから仕方なかろう。それに、学ランは黒衣だし、異世界人ばかりの中にいるんだ。日本刀を持つ日本人の僕がサムライを名乗っても、あながち外れではあるまい」
「おいおい、そりゃおかしいな。日本刀を手に入れたのは、サムライを名乗った後だって、フィアとエリシアが言ってたぜ。高木ともあろう者が、随分な矛盾じゃねえか」
「それを言えば、仁科の忠義もおかしいだろう。中学生の御主人様に手を出して、今じゃすっかり同棲中。これのどこが忠義か聞いてみたいね」
「うるせえ、忠義の末に惚れた腫れたになったんだから、しゃあねえだろ。大体、お前こそサムライとか言ってるけど、浮気したじゃねえか。しかも四人相手に!」
「あれは浮気という表現は正しくない。正確に言えば、帰れるかどうかもわからない状況で、つい心細さからの目移りをしてしまっただけだ。少なくとも、手を出していない!」
「お、ついに決定的な証言が飛び出したな。フィアが言ってたぞ。お前、レイラって女の胸を鷲掴みした上に、そのまま最後までヤろうとしただろ!」
「……ほう。そこまで言ってしまって良いのかな。君がブラジャーの畳み方を僕に尋ねたことを、学校中にバラまいてやろうか?」
「そ、そんなことぐらい、別に平気だってんだ!」
「そうかな。あのとき、君は随分と困っていたようだからね。ブラジャーがあるということは、ぱんつだってあったんだろう。心なしか興奮した雰囲気だったのは、つまり、君が御主人様の下着を散々触ったからだ。しかも、それは君が御主人様と交際する前の話だろう。もうほとんど変態だぞ」
「別に興奮なんてしてねえっ!!」
「話には尾ひれが付くものだ。そして、残念ながら僕は、そういう尾ひれをつけるのが上手だとよく褒められる」
「褒められるようなことじゃねえよっ!」
「じゃあ、中学生の女の子に手を出すのは、褒められたことなのか?」
「いいじゃねえか。清い交際なんだからよ」
「……お前なあ。一つ屋根の下に暮らしていて、それはないだろう。この前も、夜に遊びに行ったら、二人とも湯上がり状態だったぞ。洗い髪が二人とも乾いておらず、特に二人とも長風呂するクチだろう。二人で一緒に入っていたと考えるのが妥当だ。付き合う前ならいざ知らず、恋人同士で風呂に入って、まさか水着着用とは言うまいな」
「ぐっ……いや、お前だってエリシアと風呂に入っただろ。しかも、フィアもレイラも天橋まで一緒って言ってたぞ。お前こそ、彼女と浮気相手とまとめて風呂入ってるじゃねえか。千晴もエリシアも十四歳なら、お前だって同罪だ!」
「こちらはちゃんと着るモノは着ていた!」
「風呂に入るのにコンタクトつけたって天橋が言ってたぞ。このエロザムライ!」
「黙れ三流メイド!」
「なんだとコラ。やるか?」
「良い度胸だ。伊達に異世界で修羅場はくぐっていないぞ」
 ぽかんと傍観するマコトをよそに、いつの間にか高木と恵一は獲物をそれぞれの相棒に向けていた。
 緊迫する空気の中、マコトはようやくチャンス到来と、こっそりと氷の槍を握り直す。そして、そっと二人の後ろ。電柱の影に隠れた六花に目配せをする。
 そもそも、最初の予定はマコトがおとりになり、後ろから氷の棒で六花がしばき倒すはずだったのだ。思わぬ仲違いの所為で調子は狂わされたが、これは願ってもないチャンスである。六花も状況に気付いたらしく、二人に気付かれぬように、こっそりと近づいてくる。
「前々から、仁科とは一度決着をつけないといけないと思っていた。今日、この町は殺人以外は何でもありだろう。こんなに都合が良いことはない」
「おうよ。御託はいいからかかってきやがれ!」
 マコトは努めて呆然を装いながら、タイミングを計る。二人がぶつかり合った瞬間が、一番のチャンスである。不意の横槍で刀を持っている方を倒せば、残るはハタキで闘おうとしているアホ一人である。
「そおいっ!」
「おおッ!!」
 恵一が、一気にハタキで高木に襲いかかる。高木もそれに呼応するかのように、桜花を振り上げた。ここだとばかりに、マコトも氷の槍を手に、敢然と高木に襲いかかる。電柱の影から六花も躍り出て、高木めがけて氷の棒を振り下ろす。
 四人が一斉に交差する。やがて、一人ががくりと膝をつき、一人の動きはそれこそ凍り付いたかのようにピタリと止まった。
 膝を突いたのは六花。その後ろには恵一が笑いながら立っていた。
 そして、動きを止めていたのは、マコト。その喉元には、高木の握る桜花が光っていた。
「悪いが、一人で飛び出してきたときから、伏兵の存在は確信していた。両者の合意がなければバトルが認められないルールにおいて、奇襲は単なる印象づけに過ぎない……僕も同じ案を考えていたところでね」
「う……喧嘩は、まさかワザと……?」
「伏兵の叩き方は、誘き寄せることだからな。油断すると攻撃が大味になり、隙も突きやすい。三叉路で隠れる場所が電柱しかないという環境から、伏兵の位置もおおよそ想像がついた。そして、仁科がハタキで戦闘力に換算できないことから、真っ先に狙うのは日本刀を持った僕だろうという想像も容易い」
 高木が楽しそうに解説して、ちらりと恵一に目を向ける。
「高木は人を騙すのが好きだけど、あのタイミングで俺を騙す意味がねえ。かと言って、無意味に隙を晒すほどアホでもねえ。わざわざ俺と向き合うってことは、前じゃなくて後ろにも伏兵がいるってことだ。後は、まあ高木と考えてたことは一緒だな。高木に向かってくるのも想像できたし、多少なり武術の心得があるからな。当て身の一発で終いだ」
 つまり、恵一は口論の最中に。高木は口論の前から、この作戦を思いついていたことになる。しかも、鋭利な日本刀を迷うことなく、マコトに突きつけ、寸前で止めたことから、それなりに刀の扱いにも慣れているのだろう。
 作戦でも、技術でも負けていた。マコトは観念して、氷の槍を手から離す。
「参った。完敗だよ」
「うぅ……マコトさん、負けちゃいましたー……温泉、入りたかったです」
 桜花を鞘に収め、高木は「ふむ」と頷く。温泉好きの高木は、割と六花の気持ちが理解できた。
「この不思議な槍を見て思っていたが、何か変わった能力があるらしい。異世界に興味は無いか?」
「い、異世界……ですか?」
 高木の言葉に、六花がふらふらと立ち上がり、小首を傾げる。恵一も鬼ではないので、女の子だとわかった瞬間、手加減してある。もう立ち上がることぐらいはできるようになっていた。
「温泉の管理を、リッカという少女が一人でやっているのだが、温い温泉でな。熱くする方法を教えたはいいが、いつも熱くしすぎてたまったものじゃない。氷を作れるのなら、温度調節にリッカが慣れるまで手伝ってやってくれないか?」
「えっ……温泉、入り放題ですか?」
「うむ。管理さえすれば問題ない。この大会が終われば連れて行ってやろう」
「わぁい。私も六花っていいます。同じ名前って、何かの縁かもしれません。マコトさん、異世界に行きましょう!」
「……うーん……まあ、妖怪が居るんだから異世界ぐらいあるかもな。わかったよ」
 高木は連絡先をマコトと交換して、折角なので、大会用の携帯電話を開いてみる。戦闘不能や離脱ではないが、降参したのが認められたのだろう。教えて貰ったマコトと六花の名前が消えていた。
「……ふむ。あと、四組か。仁科、行くぞ」
 マコトと六花に挨拶をして、高木と恵一は先に進んだ。


「そういや、一個だけ気になってたんだけど……妖怪ってなんだろうな?」
 マコト達が視界から消えた頃に、ぽつりと恵一が呟いた。
「異世界にもいなかったが……おそらく、あの子のことだろう。この世界もまだまだ、楽しみ尽くしてはいないものだ」
「……異世界すら怪しいんだがな。まさか、この大会ってこんなのばっかり出てくるんじゃねえか?」
「気にするな。中学生に仕える男子高校生メイドも十分に珍しい」
 そりゃそうか、と恵一が笑い、再び意気揚々と歩き出す。
 目指すは、至高の鍋を2セット。 
 
コメント
この記事へのコメント
まさかの六花wwww
ベストセラー作家の元大泥棒&編集者とか文学部出身の教授&売れない小説家とか女装少年&レズっ娘とかは出て来ないでしょうね……
2009/10/03(土) 21:04 | URL | 侍二号 #-[ 編集]
不動マコトは、楠木の彼女さんに関係が?
2009/10/03(土) 22:49 | URL | 月月 #d3xRQPUk[ 編集]
>二号さん
 や、あくまでもノリで書いただけで、続きませんよw

>月さん
従兄妹という設定です。あと、前に黒衣の元ネタ書いたときに登場した不動ミコトとマコトは姉弟だったりします。

あとは、六畳一間の高柳功と、塀の中からの高柳昌彦は甥と叔父。まだ登場していない面々も繋がりが色々あったりするんですよね。
2009/10/04(日) 00:01 | URL | 伊達倭 #-[ 編集]
やってきた……ごふぁぁぁぁ!
どうも。ノリで何となくやってきました。水月です……こりゃ何ですかー!
はっきり言って書かせてもらってるこっちが逆に赤面しそうなくらいに上手いじゃないですか!! さすがは(心の)師匠!
なんていってる場合じゃない……さっさか描かないと高木君たちには何の活躍もしてもらってない……!
これはいかんや!! 早くしなければ……。
ではでは~。
2010/03/23(火) 18:23 | URL | 水月五月雨 #-[ 編集]
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
http://dateyamato.blog19.fc2.com/tb.php/177-6fa3a526
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
この記事へのトラックバック
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。