ネットで小説を書いている人間が駄文を連ねる場所。

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なんか口々に「続編!続編!」とか言うので、何も考えずに書いた。
ちょうど、最終回から一時間ぐらいした後の話。

「ワザワザ、魔王様ニ献上スルホドデモナイ。我ラデ食ラウカ」
 そんな小柄な悪魔の言葉に喜んだのは、他ならぬ高木聖人達だった。
 言葉が通じる。それはすなわち八方塞がりかと思われた中で、自他共に認める高木最強の武器が通用するということでもある。
 アスタルフィア・エルヘルブム他、高木と一緒に第三の世界に飛ばされてきた面々は喜びをもって悪魔を出迎え、高木の鮮やかな弁舌に期待をした。
 高木も周囲の期待に応えるべく。そして、悪魔すら騙すという所業に喜びを感じつつも名乗りを上げ、まずは目の前の悪魔の性格を計ろうと、実に単純な、言わば撒き餌のような言葉を投げかける。
「僕たちは、魔王様に呼ばれた者だ。献上される身ではなく、もてなされる立場でね。すまないが案内を頼めないだろうか」
 こんな単純な言葉に引っ掛かる筈がない。ただ、少しでも「対話」という状況に持ち込むためだけに用意した言葉だ。
 あまりにも下手な嘘に、流石にフィア達もこれが高木の取っ掛かりであり、あくまでも下準備に過ぎないということを理解している。
 だが、ここで高木の計算が少々狂った。
「ソ、ソウデシタカ……御無礼ヲバ。シカラバ、魔王城ヘト御案内致シマショウ」
 悪魔は、あまりにもあっさりと高木の言葉を信じてしまったようなのだ。
 流石にこれには拍子抜けである。悪魔が高木の嘘に乗って、不意打ちでも仕掛けてくるのだろうかと全員に緊張が走るが、そもそも包囲されている身である。わざわざ不意打ちにせずとも良い場面である。
「ねえ、マサト……どうするの?」
 判断に困ったフィアが小声で問いかける。高木も流石に面食らった様子だった。
 シーガイアで対峙した人間は、それなりに高木の嘘を看過してくれたし、だからこそ高木も存分に舌を振るうことができたし、それでも足りない場合は概念魔法や桜花という手段に出た。
「……まあ、魔王様ともなればもう少し手強いだろう。そっちを騙すことにしよう」
 この時点で、高木は既に「状況を切り抜ける」という目的を「魔王すら騙してしまおう」というものにすり替えていた。
 帰る手段をみつけるにしても、そちらのほうが都合が良いのも確かである。
「しかし、良いのでしょうか。今までタカギ君は無謀に見えて、幾つかの準備をして乗り込んでいました。今回は、何の用意もありません」
 ファウスト・ネクストの進言には一理ある。策略と交渉のためには情報の把握が第一で、最低でも魔王様とやらの立場がどのようなものであるかも知らねばならない。
「……最悪、魔王様を人質に取るぞ。ヴィスリー、心づもりだけしておけ」
「おうよ。まあここまで来れば、何でもアリだ」
 久々に信頼できる兄弟分が揃ったことで、高木とヴィスリー・アギトはにやりと頬を緩ませた。


 魔王ボナパルトは今年で四百八十二歳になる。
 魔族としての寿命はおよそ四百年であるから、既に半分墓に脚を突っ込んだ死に損ないであるが、それでもなおその魔力と武芸に敵う者は無く、老成された判断力や人を見る目。圧倒的なカリスマは他の追随を許さなかった。
 高木がそもそも、最初に出会った悪魔に案内を頼んだのも、彼が魔王様に「献上できる」立場にあると踏んだからだ。あくまでも下準備というか、取っ掛かりではあるが、彼の台詞には、少なからず情報が隠されていた。
 魔王様という存在がいて、この悪魔はその魔王様に人間というエサを献上できる立場にいる。
 なればこそ、初めて降り立った世界でも堂々と嘯くことができたのだが、その後の展開はやはり、拍子抜けという言葉が似合った。
 見た目以上に素直で権力の強いらしい悪魔に案内されてやって来たのは、魔王城の玉座の間。
 魔王と呼ばれた人物は、身の丈三メートルはありそうな偉丈夫で、褐色の肌に牛のような角を生やした男だった。ただし、先述したとおりに老齢であり、老いさらばえた独特の雰囲気が随所に漂う。
 高木を連れてきた悪魔が恭しく一礼して、来客を連れてきた旨を報告する。流石に魔王様ともなれば、高木のちゃちな嘘を一発で看破したらしく、騙された悪魔をあざ笑うかのように「くくっ」と喉の奥で失笑を漏らした。
 おそらくは、異世界からやってきた人間だろう、と魔王様は一発で高木達の正体を見抜いた。
 そういう人間が他にいるわけではなく、言わば五百年近く生きてきた勘のようなものだ。珍客には違いないが、魔力という存在すら知らないであろう異世界人は、実質丸裸でやって来たも当然だった。
 面倒臭いので、さっさと殺して部下のエサにしてしまおう。それが魔王様の判断だった。
「御苦労。下がれ」
「ハッ!」
 道案内を果たした悪魔がやはり丁寧に頭を下げて出て行く。あれにもまた罰を与えねばならない。いくら矮小な人間といえども、あっさりと騙されて、あろうことか玉座まで通すなど。
「さて、部下を騙した人間共には死んで貰おうか」
 魔王様の言葉は辛辣で、交渉の余地は無かった。
 よくわからないままに魔王城の中枢まで連れてこられた高木達は、当然ながら為す術がない。
 ただ、魔王様にとっても、高木達にとっても誤算だったことはあったのだが。
「死ね!」
 魔王様の端的にして絶対的な言葉と同時に、牛のような角から雷球が生まれて、高木達に襲いかかる。
 そして、臨戦態勢に入っていた高木達も、それを避けようと散っていた。
 ただ、一人だけヴィスリーが雷に対する防御策を取っていたことから、瞬時に囮を努めていた。
 リースの街でダマスカス鋼で拵えてもらったヴィスリーの剣には、柄に植物の樹脂を固めた――絶縁体であるゴムでできている。
 レイラに対抗するための処置であったが、好都合だ。ヴィスリーは剣を引き抜き、雷球に向けて剣を構えた。
 ヴィスリーの計算では、魔王様の放った電撃を剣が吸い寄せて、ゴムが身体に電撃が行くのを防いでくれるはずだった。その隙に高木共々斬りかかれば、不意打ちになる。
 だが、ヴィスリーの目論見は外れる。
 リースの街で拵えたダマスカス鋼の剣。それはヴィスリーにとっては切れ味の良い、錆びない名剣でしかなかったが、この世界の理においては、少々違うものだった。
 すなわち、高木の世界にマナが無く、シーガイアにマナが存在するように。この世界にも、この世界独自のものがあったのだ。
 この世界で、それは精霊と呼ばれている。
 いわば、意志を持つエネルギーとでも言おうか。きちんと理解した高木ならばこれを「気に入った者に力を貸す気まぐれな精神体」とでも表現したであろう。
 この精霊。幾つかの法則があるのだが、とりわけ有名なものに芸術的な価値に異様に執着するということがあった。
 科学の発達した高木の世界ですら再現不可能なダマスカス鋼鉄。それを熟練の技で鍛え上げた名剣。
 日本刀を拵えてしまう親方は、無骨な武器にも芸術性を持たせる一流の職人だった。
 これに精霊が目をつけないはずがない。一発で気に入り、事情など知らないヴィスリーの剣に早速憑依していたのである。
 ヴィスリーらはあずかり知らぬ話ではあるが、精霊の力を得ることのできるものは数少ない。
 こと、相手を殺すために作られた武器という存在を精霊が気に入るのは異例中の異例とも言える。
 精霊の力は絶大だが、その憑依する先のものによって大きく変化してしまう。絵画ならば、見る者を涙させるような不思議な魅力を。楽器ならば、演奏者の心情を映し出すような音色を奏でる。
 言わば、その物質の持つ性質を最大限に高める役割を果たすのだが。
 さりげなく剣を構えたヴィスリーが、そんなことを知るよしもない。
 ただし、精霊付きの剣はしっかりとその能力を発揮させた。
 ヴィスリーの剣は力強さよりも、素早さと切れ味が信条の小回りの利くものである。その性質を最大限に高めた結果、精霊の能力は風という形になって表れた。
 風でありながら、剣。すなわち風の刃である。
 気付けば、ヴィスリーの剣が放った風の刃がバッサリと魔王を袈裟懸けに切り裂いており、魔王様はその長い寿命を終えていた。
「……え?」
 一番驚いたのはヴィスリーである。雷を無効化しようと剣を構えただけなのに、何故か魔王様が血を噴いて死んでしまったのである。
 ぽかんとするヴィスリーをよそに、高木は恐る恐る魔王様に近づく。死体を見るのは初めてのことだが、なるほど気味の悪いものである。
「……死んでる。よくわからんが、まあ……これはこれでアリだろう」
 高木は早々に魔王様から離れて、ヴィスリーの肩をポンと叩いた。
「おめでとう。君が勇者だ」
「……いや、実感が無いんだけどよ?」
「かまわん。とりあえずその剣が異様に高性能らしいし、突破も楽だろう。いくぞ、残りの魔物も蹴散らしてしまえ!」
 第三の世界、初日。
 高木たち、偶然にも魔王様を瞬殺する。
コメント
この記事へのコメント
このノリが好きです
はじめまして
黒衣のサムライの次回作ずっと待ってました
また高木の弁を聞くことが出来るとは……
最近、ガンホーの方にも出張中の彼ですが、そこで異世界から来た魔王をブンタと一緒に葬ったとありました
ということは今回瞬殺された魔王はダミー?
タミフルの話では高木が魔王になってるんですよね?
彼らの物語がどう繋がっていくか今後の展開に期待してます!!
2009/11/22(日) 23:43 | URL | マティウス #-[ 編集]
この世界で桜花なんて使ったら……
2009/11/23(月) 09:58 | URL | 侍二号 #-[ 編集]
なんという展開wとても黒衣らしいです
2009/11/23(月) 18:57 | URL | 白いクロ #JalddpaA[ 編集]
>マティウスさん
はじめまして。
とりあえずガンホーで言ってるのは、もうちょい先の話で、シーガイアに別の世界の魔王様がやってきたときのことでして。
これは第三の世界でもなく、シーガイア原産でもない魔王様です。

んで、最初にも書いたとおりに何も考えずに書いたので、これが続く保障がまるでありません(汗
一応、続編を書くほど黒衣が完成した作品ではないというか、あれはあくまでも習作で、かなり実験的な作品でしたので(汗
もしかしたら、続きを書くかもしれない、程度に捉えて置いてくださいw

>二号さん
とかいいつつ、これの続きを多少書いているのが俺です。
桜花の精霊も実は登場しちゃうんですが……
もうこれはボツにするしかないような状況です。

>白いクロさん
久しぶりに高校生・高木を書いた気がします。
ほとんど高木とヴィスリーしか活躍していないわけですが(汗
2009/11/23(月) 22:47 | URL | 伊達倭 #-[ 編集]
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