ネットで小説を書いている人間が駄文を連ねる場所。

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 最近更新しない理由→寒いから。


 やっぱりね、寒いと指先が震えたり、パソコンの前より布団の中が恋しくなったりするのです。
 愉しみにしている人には申し訳ないと思いつつ、折角だから書きかけの短編でも晒そうかと思ったしだい。
 最近、一から物語を構築するのが何だか面倒くさいと思うようになってしまい、ちょっと充電の期間なのかもと思ってます。
 




【漂流兄妹】

 船旅なんてするもんじゃない。
 たまたま母親が当てた、一週間のペア豪華客船旅行。それが俺の手元に転がってきたのは、折しも夏休み真っ直中であり、完全無欠の暇人であったからである。
 母親は二等のエアコンを狙っての応募で一等を当ててしまい、「一週間も家事を放っておけるわけない」と辞退しようとしたのだが、俺の義理の妹――要するに義理の父の連れ子であるサチが「行きたいなー」と呟いてしまったのがいけなかった。
「ヒロキ。サチを連れて行ってきなさい」
 こうなっちまったのである。高校二年生のサチを一人で旅行させるほど、我が家はユルくはなかったが、息子への信頼は厚かった。大学二年生、二十歳の俺は保護者にするのにさほど不都合はなかったし、何よりも暇人だった。
 もしも、時間を戻すことが出来るならば。
 俺はこのときに母親の手元からチケットを奪い取り、ビリビリと引き裂くだろう。

 ざざーん、という波の音と、白い砂浜はリゾート地のようだ。
 隣には、水着姿のサチが、体育座りで海を眺めている。船影の一つもない水平線。
「……にーちゃん、ごめん」
 サチはぼそりと呟き、顔を膝に埋めた。
「サチのせいじゃねーだろ。どう考えても」
 俺はパンツ一丁でやはり体育座りをしながら、ぼーっと空を見上げていた。
 豪華客船はタイタニックよろしく沈んでしまった。
 旅の三日目。船酔いにも慣れ、毎食毎食の豪華な飯をようやく堪能できると喜んでいたときだった。
 激しい衝撃と、響くサイレン。どうやら岩に当たっただとか、魚雷を喰らっただとかいう放送が入り、緊急避難命令が飛んできた。
 救命ボートは満員で、俺とサチが乗り込む前に、既に脱出してしまっており、スーツケースを浮き輪代わりに、俺とサチはお互いを抱きしめながら、何とか沈みゆく船から脱出することができた。
 ぷかぷかと波に揺られ、確実に身体が冷えていく恐怖。次第にやってくる眠気。もしもサチがいなければ、俺は全てを放棄してサメのエサになることを選んでいたかもしれない。
 ただ、怯えるサチを守らなければと思うと、意識を失うわけにはいかず、必死に濡れた服を引き裂き、ロープ代わりにしてサチと俺を結びつけ、仮に寝てしまってもスーツケースの上に顔が出るようにした。
 そのおかげだろうか。いつの間にか意識を失っていたが、目が覚めたときには天国ではなかった。スーツケースにつかまったまま、俺とサチは砂浜に打ち上げられており、少なくとも身体は五体満足だった。
「けど、私が行きたいって言わなかったら……」
 えぐえぐと泣き出すサチの頭を撫でながら、俺は後ろを見やる。
 南国系の植物が生い茂る林だった。さっき、ぐるりと歩き回った結果、ここは島。しかもサチでも半日あれば一週できてしまうほど、小さな小さな島だった。
 海沿いに歩いたが、途中で磯らしき岩場や切り立った崖になっている場所もあった。林の中にも踏み込んでみたが、やたらでっかいヤシガニと出くわして、びっくりして逃げた。全長およそ三十センチの甲殻類は恐怖である。
 しかし、何よりの問題はヤシガニではなく、歩いている途中でおよそ人工物とおぼしきものが見つからなかったのである。
 少し目線を上に上げれば、高い山。どうやら、死火山か休火山のようで、てっぺん近くが平らになっている。
「……まあ、生きてて良かったじゃねーか」
 サチの肩を抱いて、勇気づける。
 なんせ、おそらくだがこの場所は、無人島である。携帯電話なんて個室に置いてきてしまったし、サチのは水で壊れている。救助なんて当分は望めそうもない。そうすると、俺たちはしばらく、この島で暮らさなければならないのだ。
 命を救ってくれたスーツケースはサチのもので、中にはサチの水着と幾つかの生理用品が入っているだけだった。濡れた服でいるよりはマシだと、サチは水着に着替えたが、俺はシャツを命綱にしてしまい、チノパンとトランクス。それにスニーカーと靴下が全装備である。
 下着一式に水着と、換えの服まであるサチとは大違いだ。換えがないので、仕方なくパンツ一丁で過ごしている。
「なあ、サチ。とりあえずだな……喉、乾かないか?」
 俺の言葉に、サチはこくんと頷いた。
 そう、現在の最大の懸念が、喉の渇きである。
 おそらく、たらふく海水を飲んだのだろう。おかげで身体は元気だが喉自体は焼け付くように枯れていて、一刻も早く真水を飲みたい。
 それに、もしも救助が数日後とかになるのならば、食料だって必要だ。
「……よし。水を探そう」
 俺は立ち上がり、サチに手を差し出した。
「にーちゃん?」
「救助を待つにしても、最低限、数日間の用意はしとかないとな。砂浜にでっかくSOSって書いとけば、見つけてくれるかもしれねえし、まずは生き延びよう」
 俺は足で砂浜に大きくSOSの文字を掘り、すっかり乾いたチノパンを履き、靴下とスニーカーも装備。サチは俺が本気だとわかったのだろう。水着の上からシャツを着て、お気に入りのミュールを履いた。
「行くぞ、サチ」
「うん」
 こうして、俺たちの無人島ライフは幕を開けた。



 昔、どっかのニュースで言っていたことを思い出す。
 人間は、飯を一週間食わなくても死なないらしいが、水がなければ二日も持たないらしい。
 ただでさえ喉が渇いているのだ。海水は嫌になるほどあるが、ぶっちゃけ飲む気にはならない。必要なのは真水だった。
 小さな島に都合よく水が湧き出ているとは思わないが、雨ぐらいは降るだろう。せめて、池でもあれば飲み水は確保できる。
 俺たちはまず、島の外周を歩きながら、背の低い草原を見つけ、そこから山に向かって進むことにした。
 無人島だが、もしも大きな獣でもいれば、素手で人間が太刀打ちは出来ない。薬もない状況で毒蛇に噛まれたらどのみちアウトだが、水がなければどうせ死ぬので、もう覚悟を決めるしかない。
 少なくとも、動植物が存在しているのだから、雨水にしろ、水の確保はできるということだろう。そう思って草むらをサチと手を繋いで歩き回る。
「にーちゃん、探すって、どこにあるかもわかんないんだよ?」
「いや。池はともかく、川ってのは高いところから低いところに流れるだろ。山が真ん中にある島ってことは、真ん中に近いほど川に辿り着きやすい」
「もし、無かったら?」
「山のてっぺんに行く。上から見たら、池を見つけられるかもしれないし」
「わ。確かにそうかも。にーちゃん、頭いいね」
 サチの信頼のまなざしを受けながらも、俺の気分は決して明るくない。
 水場がうまく見つかればいいが、人間が飲める水かどうかはわからない。もしもワニでもいれば、鳥のような翼でも無い限り、近づくことすら難しいだろう。
 船旅の行程を考えれば、さほど日本からは離れていないはずなのだが、少なくとも沖縄よりは南に来ている。生態系などてんで知らないが、沖縄にハブがいるのだ。それより南にあるこの無人島にワニがいない保障は無かった。
 昔、気まぐれでプレイした無人島サバイバルゲームや、ロビンソン・クルーソーを読んだことを思い出しながら、膝よりも上に伸びている草原を歩く。
 草原といっても、片田舎の中学校の運動場ぐらいの広さであり、目指すべき山は視認できる。大型の肉食獣もいないようだった。
「ライオンとか、いないよね?」
「ある意味じゃ、助かったな。けど、森には虎がいるかもしれねえし……いや、こんな狭い島にいるものなのかもわかんねえけど」
 しかし、逆を言えば真水がないからこそ、大型の動物が生息していないということになるのかもしれない。
 そうなると、雨水しか水を確保する手段がなくなってくる。最悪、一時しのぎとして海水で最低限の水分を摂取するしかないのか。
 海上で漂流した人間は、尿を無理やり水分とみなして補給していたこともあるそうだが、流石にそれは嫌だ。
 意地でも、真水を見つけなければ。


 二時間ほど、ヒイヒイ言いながら山を登った。
 山といっても日本のように木々が生い茂るようなものではなく、ゴツゴツとした岩で形成された岩山だったが、収穫はあった。
 頂上から眺めてみると、この島の地理がよくわかったのである。
 まず、やはりというか、完璧な島である。それもとても小さな、およそ人など住んでいないであろう無人島。
 人間が住んでいるような形跡はない。向かって正面には通ってきた草原。反対側にはうっそうと茂る森。そして、右側には断崖絶壁に繋がる岩場。どうやらこの岩山は完璧に島の中央にあるわけではなく、やや左寄りにあるらしく、山の左端がそのまま磯になっている感じだ。
「サチ、方角はわかるか?」
「夜になれば、北極星を探せると思うよ」
「……まあ、とりあえず太陽の位置的に、左側が西かな」
 もしも、この島で長らく生活せねばならないのであれば、地理の把握は絶対条件だ。漂流した場所であり、砂浜から森に繋がる場所を南の浜とでも呼ぼう。西の磯。北の草原。南の崖。少々安直だが、下手に凝るよりも利便性を重視すべきだ。
「間違ってたらどうするの?」
「そんなに問題ないだろう。別に正解じゃなきゃ困るってわけじゃないんだし……自分がどこにいるのか、山を目印にして把握できるようにしておけば問題ないはずだ」
「そっか。じゃあ、この山は?」
「んー……ここだけは、ちょっとカッコイイ名前にしておきたいよな」
 俺がふと後ろを振り返りながらつぶやく。
 そもそも、ノンキに地理の把握なんてしていられるのは、俺たちが既に真水を確保しているからに他ならない。
 この岩山は、元をただせば火山だったのだろう。現在は休火山か死火山になっているようだが、火口だった場所が窪みになっており、そこに雨水などが溜まったのだろう。いわゆるカルデラ湖であり、直径は約100メートルほど。カルデラ湖だからか、ほぼ真円に近く、円周は300メートル前後だろう。雨水が溜まってできたのだろうが、古くから存在しているのと、岩山のおかげでろくに動植物が生息していないこともあってか、透明度が高く、飲料水にしても問題はなさそうだった。
「救助を待つにしろ、脱出するにしろ……水場がないと話にならないからな。ここは生活の拠点になる」
「……雨降ったらどうしようもないけどね」




 気が乗ったら書く。
コメント
この記事へのコメント
実はシーガイアというオチを夢想してみたり。
2009/12/14(月) 23:37 | URL | 侍二号 #-[ 編集]
見えた!
「お兄ちゃん、好き……」
「いや、サチ。この世には吊り橋効果というものがあってだな。つまり、それはただの勘違いなんだよ」
「勘違いでも、好きなの……!」
2009/12/15(火) 10:15 | URL | 東 #-[ 編集]
>二号さん
いやいやw
まあ別にシーガイアでも問題ない……わけではないですがw

>東さん
どっかで見た台詞だな、とか素で思ってじゃないですかw
義理の妹よりも義理の姉に言わせたい気もしますがw
2009/12/15(火) 12:56 | URL | 伊達倭 #-[ 編集]
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