ネットで小説を書いている人間が駄文を連ねる場所。

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懲りずに二話を。
なんか主人公が定まらないなぁ。こう、高木ばりの存在感を作り出すのは難しいんだよなぁチクショウ。



 抑揚のない声でぽつぽつと語る阿部琴美に付き従いながら、雄介は己の現状に首を傾げていた。
 えもいわれぬ違和感。黒い犬。剣を携えたクラスメイトの少女。
 同時に降りかかるにしては荷が勝ちすぎる。しかも、それはどうやら今回限りのことではないらしい。
「貴方が見たのは魔物」
 注意を逸らすと聞き取れないような声で呟く琴美に、雄介は呆けたように「魔物?」と鸚鵡返しをするしか無かった。
 その単語自体に馴染みがないわけではない。ゲームがそれなりに好きな雄介にとっては、割と見かけるものだ。
 魔物。モンスター。概ね、雑魚敵の総称というイメージが強い。
 人を襲う害獣。駆逐すべき敵ではあるが、中には育成を楽しむペットという扱いをするゲームもある。
 古くは神話などに登場する架空の存在である、という程度の知識しかない雄介にとっては、琴美の言葉は冗談のようにも聞こえた。
 琴美は特に多くを語るつもりは無いらしい。路地で雄介を助け起こした後に、ただぽつりと「一緒に来て」と呟き、歩き始めたのである。
 状況すら把握していない雄介であったが、黒犬に襲われた中その窮地を救ってくれて、なおかつ見慣れたクラスメイトである琴美に素直についていくことにした。クラスメイトと言うだけでほとんど会話を交わしたことの無い琴美が剣を握っていたという時点で、彼女との関わり合いも避けたいという気持ちもあったのだが、少なくとも敵には見えない。いつも背景としてしか認識していないながら、確かに日常の中に存在していた少女なのである。彼女の言う魔物があの一匹だけとも限らない。そう判断すると、他の選択肢など見つからなかった。
 象徴的だった剣は、いつの間にか彼女の手から消えている。はっきりと確認はしなかったが、おそらく斬り殺されたであろう黒犬の死骸も無かった。
 どうなっているのだろう。その疑問ばかりが雄介の頭の中を渦巻くのだが、少なくとも今歩いている道が見知ったものであることは確かだ。陽桜高校まで続いているのだが、普段は滅多に遣うことの無い、通学路よりも少し遠回りで、薄暗い裏路地である。
「学校に戻るのか?」
「違う」
 雄介の問いかけに琴美は端的に答えた。どうせならば何処に向かっているのか教えてくれてもいいようなものだが、そういう甲斐性が彼女にないことぐらいは、普段の彼女を見ても推し量れることだった。
 他人との繋がりが、異様に薄い。
 阿部琴美という少女を端的に形容するならばそうなってしまう。決して人間嫌いではないようなのだが、そもそも他人に対する興味がほとんど見受けられない。
 容姿こそ物静かで憂いげな美少女であるから、声をかけられることもあったが、遊びの誘いも「いや」の二文字で断ってしまう彼女に近づく者はもういない。
「……何処に行くんだ?」
「もうすぐ着く」
 別に干渉されることを嫌う性質でもないようで、問いかければ答えは返ってくる。雄介にとって欲しかった答えではないにしろ、十分に満たない距離を歩いた段階で「もうすぐ着く」と言われたならば、ほぼ二、三分と見て良いだろう。ちょうど、陽桜高校に到着するのと変わらない時間である。
「そういや、よくわかんないけど御礼を言わないとな。ありがとう」
 微かな間を埋めるようと、雄介は琴美の隣に並んで喋りかける。不思議そうに小首を傾げる琴美に内心で呆れながらも、仕方ないと諦めて言葉を紡ぐ。
「さっきの黒い犬みたいなのが魔物なんだろ。喰い殺されるところだったのを、助けてくれてありがとうってことだ」
「ああ……別にお礼なんていらない」
 琴美は雄介の言葉の意味を理解して頷いたものの、やはり態度は素っ気ない。それでも雄介は間が持たないことを恐れてしきりに話しかけた。
「いやいや、命の恩人なんだから礼ぐらい言わせて貰わないとな。それとも、なんか形で示した方が良いのか……あんまり金がねえから大したモンは用意できないけど」
「……いらない」
 琴美は雄介の言葉にやや気圧されるように、ぽつりと呟いた。しかし雄介としてもここで話を切られては残りの時間を気まずく過ごす憂き目を見る。
 人生を明るく楽しく健やかに過ごすことをモットーに掲げる雄介は、気まずい沈黙が苦手なのである。そもそも得意な人間なんていないのだろうが、雄介はとりわけこれを嫌う。
 最初こそ魔物とやらの襲撃や違和感などで気まずさに気がいく余裕がなかったものの、気持ちが落ち着いて冷静に物事を考えられるようになった今では、もう耐えることができない。空回りしようが、とにかく喋り倒すほうが幾分マシだった。
「そういや、あの剣って何処にいったんだ。それとも、幻覚でも見ちまったのか?」
「……着いた」
 必死で会話をつなごうとした雄介を丸々無視するように、琴美はぽつりと呟いた。
 あまりにも鮮やかなスルーに少々面食らった雄介だが、目的地とは何処なのだろうという気持ちが勝り、周囲を見渡した。
 陽桜高校から徒歩で三分ほどだろう。随分と古いアパートの前であった。
 木造二階建てで、築数十年は経過しているだろう。しかし、アパートにしては妙で玄関が一箇所しかない。アパートならそれぞれの部屋に玄関があるはずなのだが。
「ここ?」
 思わず尋ねてしまうのも無理は無い。しかし、琴美は特に気にした風もなく、こくりと頷いた。
「ここに何があるんだ?」
「……私は、説明が苦手」
 かすかに眉をひそめて琴美は歩を進める。中に入ればわかるということだろうか。雄介は気後れしながらも立ちすくんでいるわけにも行かず、後に続いた。
 琴美は玄関のドアを無造作に開き、雄介を振り返る。
「入って」
「……おう」
 未だに状況を把握しているとは言い難い雄介だったが、ここまでくれば従うしか道は無い。逃げ出すことも頭をよぎったが、またあの黒犬にでも襲われてはたまらない。
 琴美に続いて玄関をくぐる。ごくごく普通の民家のような玄関である。
 琴美はスニーカーを脱いですたすたと一番手前にある部屋の前まで進む。そして、ようやくここでノックをした。
「お、おい……普通、玄関でするだろ」
「ここ、下宿屋だから」
 下宿屋とは、いわば風呂やトイレに加えて居間や台所まで。つまり自室以外のすべてが共用の賃貸住宅のことである。今ではあまり姿を見ることは無く、雄介も昔に読んだマンガでそういうモノがあるということは知っていただけである。
 ぼんやりと様子を眺めていた雄介だが、やがて琴美の前の扉ががちゃりと開き、雄介たちより幾つか年上の女性が姿を現した。
 艶のある黒髪に、すらりと細長い体躯。凛として整った目鼻だち。およそオンボロ下宿屋に似つかわしくない美人である。しかし、服装は無地の白シャツにジーンズというラフなものであり、料理の最中だったのか花柄のエプロンをつけていた。
「お、琴美か。なんだ彼氏ができたかのか」
 挨拶も何もなしに女性が雄介をまじまじと眺めて、にやりと笑う。声も容姿に相応しい澄んだものであったが、口調は妙に男らしい。
 琴美は一言「違う」と呟くと、雄介に振り返った。
「不動ミコトさん。ここの大家さん」
「よろしくな……えぇと、誰だお前?」
「鵡海雄介です……というか、状況がよく飲み込めていません」
 割と社交的だと自負する雄介であるが、いきなり琴美の恋人扱いされ、次の瞬間にお前呼ばわりされてもにこにこと笑顔を見せるほど度量が広いわけでもない。
 何よりも、この異様な空間が不思議で仕方なかった。
「ん、まあ琴美は口下手だからな。とりあえず、コーヒーでも淹れようか」
 美人大家――ミコトはにかっと笑うと雄介たちの横を通り抜け、台所へと向かっていった。
「座って。ちゃんと、説明してくれるから」
「……ほんと、お願いするぜ」
 雄介は段々と面倒くさくなり、投げやりに呟くと、ちゃぶ台の前に腰を下ろした。

 ものの二分もしないうちにミコトはコーヒーを三つ持って現れた。
「いきなり待たせて悪かった。琴美から簡単に話は聞いたよ」
 雄介の前に湯気のたったコーヒーが置かれる。琴美はミコトに状況を説明しに台所へ行っていたので、ミコトと一緒に戻ってくると、雄介の隣にちょこんと腰を下ろした。
 ミコトはコーヒーを並べ終えると、雄介の正面に座り、ゆっくりと息を吐いた。
「じゃあ……まず、雄介の目の前に現れた黒い犬の正体から説明しようか」
 ミコトは先ほどまでの人を食ったような態度をふっと消し去り、おそらくは彼女の本来の姿であろう、凛と鋭い視線を雄介に向けた。
「琴美からも言われたと思うが、あれを私達は魔物と呼んでいる」
「……魔物、ですか」
「ああ、ゲームなんかでよく聞くだろう。人を害する生物の一群だ」
 ミコトの言葉はおよそ現実離れしたものである。雄介も戸惑ったが、先ほど襲い掛かってきた黒犬を考えれば、単なる妄言とも思えない。
「やつらは、人間を食う。否、正確に言えば人間の精神に宿っているマナというエネルギーを食う。人間にとっては天敵のような存在だ」
「……ちょっと待ってください。そんな話、聞いたことが無いですよ。そんな危ない存在、知らないはずがないでしょう?」
 思わず口を挟んでしまう雄介だが、ミコトは特に咎めるでもなく、微かに苦笑しただけだった。
「確かにそうだ。だが、街中で襲われた君は、既に経験しているんじゃないだろうか。君を襲った魔物は、君以外の人間に意識を向けている素振りがあっただろうか?」
 ミコトに指摘されて、あのときのことを思い出す。
 確かに黒犬は雄介以外の人間に見向きもせずに、まっすぐと雄介に向かってきた。しかも、雄介以外の人間はそのことに気付いた様子も無かったのだ。
「……魔物ってのは、俺しか見えない。んで……魔物を見ることができたのも、俺だけだった……?」
「察しがいい男は好きだ。話が早くて助かるよ」
 ミコトはにやりと口角をあげると、コーヒーをすする。
「付け加えると、魔物は決して君だけしか視認できないわけじゃない。そして、魔物を見ることができるのは、君だけじゃない。琴美が魔物を倒したところは、君も見ただろう?」
 ミコトの言葉に雄介は素直に頷いた。確かに目で見なければ、あの黒犬を一刀のもとに斬り伏せることなどできるはずがない。
 雄介が琴美を見ると、琴美は小さく頷いた。
「魔物というのは、マナを栄養に生きる存在の総称だ。そしてマナというのは、万物に宿るエネルギー……まあ、およそ信じられない話だというのは、私自身もよく理解している。だから……実際に見せたほうが早いだろう」
 ミコトはそう言うと、琴美に目配せを送る。琴美はやはり小さく頷くと、すうっと立ち上がり、右手を掲げる。そっと目を瞑り、数秒の沈黙が訪れる。
 そして、次の瞬間。雄介を助けた時に彼女が手にしていた両刃の剣が、いつの間にか彼女の手に握られていた。
「……は?」
「これがマナだ。万物に宿り、万物に変化する。そして……普通の人間には見ることもできないモノでもある。持って生まれた才能とも言える」
 ミコトはそれだけを呟いて、改めて雄介を見る。
「マナってのは、剣なのか?」
「違う。マナはあくまでも万物に宿るエネルギーであり、琴美はそのエネルギーを剣という物質に変化させただけだ」
「……何にでも変化する、エネルギー……」
 それは、まるで夢のような話だった。
 剣という無粋なものに変えずとも、金にして売ればそれだけで大儲けができる。私欲でなくとも、その利用方法などいくらでもある代物だ。
「すげえ……」
 思わず雄介は呟いて、琴美の剣をまじまじと見詰める。
 決して日本刀のように鋭利な刃ではないのだろうが、それでも腕力で叩き割るような無骨な剣でもない。レイピアに近く、切れ味も非常に良さそうだった。
 装飾こそほとんどなされていないが、柄には握りやすいように布が巻きつけられている。これならばあの黒犬を一刀両断に斬り裂くことも可能だろうと思えた。
「これ、普通の人間には見えないのか?」
「……うん」
「そっか……じゃあ売ったりもできないわけか。俺が触ることはできるのか?」
「できる……」
 琴美はぽつりと呟いて、ミコトを見た。ミコトも頷き、雄介を呼ぶ。
「まあ、年頃の少年には興味が尽きない代物だとは思うが……生憎と万能ではない。見ろ」
 そう言って再び琴美の剣を指差す。しかし、雄介が振り返ったときには既に、琴美の手には剣が握られていなかった。
「あれ。どこに行ったんだ?」
「マナに戻ったのさ。マナを変化させるのは、人間の想像力。つまりイメージだけど……人の持つイメージが完璧だと思うか?」
「いや、そんなことは……」
「だろう。完璧でないイメージによって作り出すものだ。綻びが生じて、すぐに元のマナに戻ってしまう。それに、この世の99.999……まあ、それぐらい多くの人間が知覚できないものだ。悪用も有効活用も難しい」
 ミコトの説明に、雄介は首をひねった。
 確かに、すぐに消えてしまう上に普通の人間には見えないものだとしたら、その価値はほとんど無くなってしまう。つまり、そうなってくるとマナとは単なる厄介者でしかない。何と言ってもマナを知覚できる人間は魔物の餌とみなされるのだ。
 だが、それ以上に気にかかるのは何故、雄介が急にマナを知覚できる立場になってしまったかということである。
「……どうして、こんな面倒なことに?」
 雄介の問いに、ミコトはしばらく黙っていた。ただじっと雄介の顔を見詰め、やがて首を横に振った。
「それは私にもわからない。私も過去に突然マナを知覚できるようになってしまった。そして……今日まで魔物とずっと戦ってきただけだ」
 ミコトの言葉に、琴美を見る。琴美は曖昧に頷くだけだった。
 まるで魔法のような能力だと思ったのも束の間、雄介はがくりと肩を落とす。これから一生、さっきの黒犬に追いかけられる人生なのだろうかと思うと、気が滅入るどころの騒ぎではない。
 そんな雄介に、しかしミコトは慰めるわけでもなく、淡々と言葉を紡いだ。
「まあ、ショックとは思うが……生憎、いつまでも落ち込んでいる暇もない。君にはこれから、法術を覚えてもらう」
「……ホウジュツ?」
「さっき、琴美が見せただろう。己のマナを操り、別の物質に変化させる術だ」
「どうして、そんなもの覚えないといけないんだよ……」
「決まっているだろう。自分の身を守るためだ……断っておくが、雄介はマナを知覚できるようになった人間としては、この上なく運がいい。大抵は魔物に襲われて食われるのがオチだ。琴美が偶然近くにいて助けてくれなければ、とっくに死んでいる」
 ミコトの言葉に雄介は反論することができなかった。
 確かにあのときに琴美が現れなければ、あの黒犬に襲われて死んでいたかもしれない。仮に運良く逃げおおせたとしても、何も知らないで過ごしていれば、いずれは命を落としてしまうだろう。
 そして、そんな危機に対抗するための能力を教えてくれる人間が目の前にいるのである。確かに何も知らずに死んでしまうよりは、よほど運がいい。尤も、マナを知覚できるようになってしまった段階で、何千、何万分の一。或いはそれより低い確率でのハズレくじを引いてしまったわけではあるが。
「……やらなきゃ死ぬのか?」
「魔物は割とそこら中にいる。仮に逃げるのが得意でも、およそ人らしい生活なんぞ送れないだろうな」
「……わかった。悩むだけ無意味なことみたいだ」
 決して腹を据えたわけでもなく、何もわかっていないに等しい中ではあるが、それでも差し伸べられた手を払いのけるほど、雄介は強い人間でもない。だからと言っていつまでも落ち込んでばかりいるほど弱い人間でもない。
「うむ。決断の早い男は好きだ。面倒が減る」
 ミコトはにかっと笑い、すっと手を差し出した。
「これからよろしく頼む。言っておくが、私はこれで中々厳しいぞ」
「こっちこそ……死ぬ気でやるしかねえんだ。よろしく頼むよ」
 雄介も手を差し出し、ミコトの手を握ろうとしたときだった。
 不意にがちゃりと扉が開く。ふと手を止めて振り返った雄介は、ぽかんとする。
 決して魔物が礼儀よく登場したわけではない。だが、扉を開いた存在が、あまりにも雄介にとっては予想外だった。
「失礼ながら、話はすべて聞かせてもらっていた。どうか僕にも、そのホウジュツとやらを御教授願いたい」
 扉の向こうに立っていた――ひょろりと背が高く、眼鏡をかけた神経質そうな学生服姿の男――高木聖人が、低いが良く通る声で言い放っていた。
コメント
この記事へのコメント
ま た 高 木 か

それにしても、不動ですと……?
2009/12/26(土) 00:28 | URL | 侍二号 #-[ 編集]
うおっ
さっそく足跡を…
今後ともよろしくお願いします。

最後の二行で全部持っていった高木に乾杯(΄◉◞౪◟◉‵)ノ
2009/12/26(土) 03:30 | URL | 三太夫 #-[ 編集]
はじめまして
高木の登場率の高さ異常www

個人的にちはるを出してほしいです
2009/12/26(土) 22:02 | URL | ナナ #-[ 編集]
>二号さん
不動マコの兄貴→雪月恋歌の主人公、不動マコト

不動マコの従姉→今回のミコトさん

>三太夫さん
どもども、今後ともよろしくお願いします。

高木は主役を食うので有名な脇役になりそうです。

>ナナさん
そんな高木がきっと、みんな大好きなはず……だといいんですが。

千晴は流石に出てきませんw
草案自体は御主人様よりも前に出来上がってた、熟成8年モノですからw
2009/12/26(土) 22:55 | URL | 伊達倭 #-[ 編集]
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