ネットで小説を書いている人間が駄文を連ねる場所。

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 僕は小説を書くのが好きだ。
 どれくらい好きかというと、文章を書いているときは三食や睡眠を抜いても全く平気で、授業中だろうと、休み時間だろうと、それこそ食事中や夢の中でさえも書き続けるほどだ。傑作が仕上がったと喜び勇んでいる最中、夢から覚めて唖然とした記憶は山のようにあるし、そのたびに夢の中で書き上げた内容を懸命に思い出そうと悪戦苦闘もしている。
 将来は文筆にて生計を立てるのが夢であり、友人達もみな、お前にはそれしかないと口をそろえて言う。それだけ面白い小説を書くのではなく、本当に小説しか書かないからだ。僕の小説は面白いのか否か。人に読ませたことが無いのでわからない。
 決して恥ずかしがっているわけではなく、まだ完成していないからだ。話として完結はしていても、まだまだ人に読ませるようなレベルに達しているとは思えず、どうしても読ませる気にはなれない。

 そんな僕だが、つい最近、ようやく人に読んでもらいたいと強く思うようになってきた。
 それは、アドバイスや客観的な意見を求めてのことではない。もっと低レベルで、より純粋な気持ちからだ。
 好きな人に。愛する女性に、彼女のためだけに書いた作品を読んでもらいたいと思ったからだ。
 気の利いたプレゼントなどできるほど、僕は世間に聡くない。容姿も成績も運動神経も人並みかそれ以下で、文字を覚えた頃からひたすらに書き続けてきた小説という存在以外に、僕は自分自身を表現しうるものが存在しないだけだ。
 優しくて、明るくて、まるで世界中から愛されているのではないかと思えるほどに美しい人に。彼女を主人公にした物語ではなく。否、それどころか、彼女を登場させることもなく。
 ただ、ただ。彼女のためだけに。彼女が好む登場人物が、彼女が楽しめる内容で、彼女が望むような結末を迎える話に仕上げたかった。
 勿論、単なる御都合主義ではいけない。ときとして彼女をはらはらと不安に陥れ、場合によっては悲しみの涙を浮かばせる必要もある。それは小説が物語であり、物語とは人の感情を先導させるように作られていくものだから、たとえ一時的にでも彼女の意にそぐわない展開を見せることも必要なのだ。
 そう、すべては彼女のためだ。僕が書いた小説が、決して彼女にとって単なる御都合主義の、彼女におもねった内容だと思わせてはいけない。あくまでも、そうとは知らずに「これはまるで、私の為に書かれた話みたい」と思わせなければならない。

 僕は彼女の全てを知りはしない。だから、想像で埋めなければならない彼女の趣味嗜好もある。それに、僕自身の小説家としての信念も曲げてはいけない。僕が彼女のために小説を書くのは、僕が小説しか書けないからだ。その僕が、小説への信念を曲げて書いた物語など、紙くずと同じ値打ちにしかならない。
 彼女の為に、僕が書いた物語。そうでなければ、何の意味も成さないのだ。

 かくして、僕は小説を書き上げた。
 随分と苦労して完成させたが、傑作であるということは疑いようが無かった。
 彼女のことばかりを考えていたので、途中まで失念していた問題が、何よりも厄介だっただろう。それはつまり、彼女に友人が多いということに起因する。
 もしも、彼女がこの話を読み、深く感動して、是非友人にも勧めようと思ったときに、友人達が微妙な反応をしては興ざめである。彼女にそんな思いをさせることなく、むしろ、友人達と一緒に感想を語り合えるような内容が好ましかった。彼女と同年代の人間の多くが共感でき、なおかつ媚びたものにならないようにする必要があったのだ。
 さらに、彼女が家族にも紹介したときのことを考えれば、年代に関わらず楽しめる必要があった。
 さらに。もしも彼女の友人や家族が、さらに他の友人や知人に紹介したとしよう。そうするともう、様々な趣味や好みの人間が楽しめる必要があるではないか。
 ましてや、彼女がこの話を気に入り、幾度も幾度も。歳を重ねた先まで読み返すことなどあれば。
 世代や趣味嗜好だけではなく、時代の流行すら超越した楽しさが必要ということになる。
 それはつまり、人間が根本で。性別や人種や、時代や宗教などで形成されるよりも、もっともっと手前の部分に根ざしたところの話となる。

 先にも書いたとおり、僕はこれらの条件を満たしているであろう小説を書き上げた。
 本当に苦労したのだけれども、やはり先述したとおりに、傑作であった。
 何故、傑作であるのか。その答えは今現在、僕の隣にいる女性に聞けばわかるのではないだろうか。
 世界中から愛されるような美しい人のために。たった一人の為に書いた物語は、どうしてか世界中の人々が愛する本になってしまったけれども。
 世界でたった一人ずつの僕と彼女は、小説では到底御都合主義すぎて話にならない結末の先を、僕達だけのために書き綴っていくのだろう。
コメント
この記事へのコメント
ふむ…
何かを感じて、出現。冗談ごとじゃなくね。
音沙汰なくてどうしたんだろうと正直不安だったのだけど、やはりアナタは格好のいい人なんですね。
2011/09/28(水) 05:04 | URL | 月 #d3xRQPUk[ 編集]
いやはや、本人も稀にしか思い出さないブログとか、マジですんません。
音沙汰無かったのは、実はフラワーデザインの勉強してたからです。今も勉強中です。
家族が概ね花関係の人で、いい加減に手に職つけんとアカンということで、文章より花での創作活動がしばらくメインとなってました(汗

最近はようやく落ち着いて、勘を取り戻すべくちまちま書いてますが、中々戻りませんね、勘。
風景描写とかの再特訓をしつつ、思うことを少しずつ書いていきますよー
2011/10/29(土) 22:36 | URL | 伊達倭 #-[ 編集]
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