ネットで小説を書いている人間が駄文を連ねる場所。

2017/06123456789101112131415161718192021222324252627282930312017/08

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
 俺は大学の四年間のうち、最初の二年間を自宅から通い、残りの二年を下宿して過ごした。
 学費以上の面倒をかけさせてはならないと思い、交通費や小遣いを捻出するために深夜バイトをして二年間を過ごしたのだが、軟弱な俺は寝不足で大学を休むことも多くなり、単位が足りずに「逆に迷惑をかける」と思い直して下宿の道を選んだ。

 はっきり言って一回生、二回生の頃は常に寝不足のようなものだったので、バイトのない日は友人宅で寝泊りして睡眠時間を水増ししていた。
 蘇戸(そと)は、一回生の頃に散々寝場所を提供してくれた友人である。

 蘇戸も一泊懇談会で仲良くなった男だが、少々毛色の違う男だった。
 オタクであることは間違いないのだが、表向きはそんな雰囲気をちっとも見せず、たまに某大長編漫画(作者が妖精と噂されるアレ)の話題になると目の色を変えて語りだす程度であり、ガンダムやエロゲ、アニメに声優なんでもゴザレな日本丸や俺のようなオタクと、趣味の話題でさほど盛り上がることは無かった。
 しかし、あまり外交的でない蘇戸もまた、チャラい大学生活などできるはずもなく、ごくごく自然に俺たちに溶け込んでいた。俺は霞と二人して、よく蘇戸の家に泊まりに行き、寝不足に拍車をかけた。
 近所のレンタルビデオ屋でアニメを借りて上映会。エロビデオを借りて上映会。深夜アニメのチェック。ゲーム。だらける。たまに酒を飲む。そんな怠惰な大学生活の象徴のような行為に励んでいたのである。
 蘇戸は気の好い人物で、俺や霞を特に嫌がるでもなく受け入れてくれて、元々喫煙者だった霞や、付き合って三日の彼女に振られた折に煙草に目覚めた俺のために、灰皿まで設置してくれた。
 霞は彼の家に蘇戸宅ノートを設置して、絵を描いたりする。
 俺は勝手に蘇戸のパソコンにゲームをインストールして洗脳活動を繰り広げた。まさに悪行三昧といえよう。

 俺と霞も、蘇戸のパソコンを新調するためにクリスマスイヴに電気屋に付き合って、セットアップも手伝ったり、たまに恩を返していたが、十分の一の恩返しにしかなっていないだろう。
 無論、パソコンのセットアップが完了すれば「彼女いない俺たちに乾杯!」という流れになり、年齢=彼女いない暦の霞。高校時代に彼女がいた蘇戸。実は一人だけ童貞ではない俺という三者三様の自棄酒を楽しんだものである。

 蘇戸という男は、とにかく好いヤツなのだが、知れば知るほどに彼のことがわからなくなるという、ちょっと不思議な男でもあった。
 いわば、物差しのベクトルがややズレているのだ。そのズレが僅かだから、あまり親しくない人間にはわからない。知れば知るほど、そのベクトルのズレを察知してしまい、余計にわからなくなる。
 このベクトルのズレは説明が困難なほど僅かなものであるからして、彼の本質を語るのを非常に困難にしている。
「俺は蘇戸の本質を理解できていないかもしれない。けど、微妙に人とズレていることを知ってるし、理解が難しい男だということも知っている」
 俺が他人に蘇戸を説明したときに使った言葉だ。
 同席していた蘇戸はひでぇと言っていたが、その隣で霞は頷いていた。

 蘇戸とは最近、仕事の都合で中々会うことができない。
 けど、ヤツのことだから親しくなった人物を困惑させていることだろう。
 だが、そいつもきっと蘇戸と出会えてよかったと思っているはずだ。
コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
http://dateyamato.blog19.fc2.com/tb.php/66-8f94f934
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
この記事へのトラックバック
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。